teenVOGUE休刊で考える、ティーン誌の未来

久しぶりに、大好きな雑誌の話をします。


日本のニュースサイトではWWD以外は報じていませんが、今月米コンデナスト社がUS版teen VOGUEを休刊することを発表しました。(デジタルを発展させていく予定らしいですが、私は同じ媒体でも雑誌とデジタル版は別物と思っています…。)

www.businessoffashion.com

中学生の時から今でも愛読している雑誌が終わりを迎えてしまった今、近年のteen VOGUEの功績について少し振り返りながら、ティーン誌の未来を考えてみようと思います。

 

 

昨年から弱冠30歳の最年少、黒人女性、とまるでオバマ大統領就任のような異例の人選で、Elaine Welteroth編集長が就任した矢先のこの悲報。(まだ彼女に代わってから、3号しか出していません)

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正直なところ、彼女が来るまでのteenVOGUEは、Seventeenなどとあまり変わらない従来型のティーン誌で、表紙を飾っている流行りのハリウッドティーンセレブのインタビューを中心に、ビューティティップス、新学期やハロウィン、プロムなどといった時節に関連するスタイリング記事という構成で、毎月なぁなぁと続いている気がしていました。

 

2016年、Elaineを迎えて、縦に細長いフォーマットで生まれ変わった、teenVOGUEは全く違うものでした。人種問題、貧困、LGBTQ、環境など社会問題、トランプ政権後のアメリカについての政治的な内容にも踏み込んでおり、ファッション誌ではなく、ティーンがこれからのアメリカを担っていく大人になっていくために知っておくべきことが詰まっていました。上記の問題において意識が後進的な日本で育った私は、ティーンはとっくに過ぎてしまっていますが、刺激を受けて考えさせられる内容ばかりでした。ピックアップするセレブリティや、人気のセレブリティへのインタビューテーマも、面白い切り口が多かったのも印象的でした。

そんな今のteenVOGUEを切り捨ててしまうコンデナストの心なき決断に落胆しておりますが、(VOGUE全体を統括しているアナウィンターはどう考えているのか気になる)よほど財政的に厳しいのでしょうね。アメリカのティーンエイジャーは、デジタル・SNSしか見ていないんだろうなあという現実もひしひしと感じます。 

 

では、10代向けのメディアは、「デジタル」だけで良いのでしょうか?

ファッション系デジタルメディアは、いまの速報型で良いのでしょうか?

ただ、いまの私たちは、もはやニュースを知ることも、まだ知らないもの・人・場所を発見することも、SNSで済ませられてしまう。

雑誌ができることは何なのでしょう?

それは、個々の記事が束となり強い説得力をもった「問題提起」、ライフスタイルやファッションならもう少し柔らかい表現が適しているとすると「問いを投げかける」ことなのではないかなと私は思っています。

2016年から3号だけ出版されたElaineが編集長を務めたteen VOGUEは、毎号テーマが一つ設定され、そこに基づいて特集が構成されていました。

Vol.1 The LOVE Issue

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様々な愛について思いを巡らすための号。

映画「ムーンライト」で主演を務めたアシュトンへのインタビュー、シリアの難民の少女が新たな居住地スウェーデンで見つけた愛についてのエッセイ、動物たちへの愛(動物保護)などを特集。Healthのコーナーでは性についてオープンに話す姿勢をみせました。(LGBTQの性交渉についてもフィーチャーし、一時話題にもなった)

 

Vol.2 The SOUND of HOPE/ HEALING/ PROTEST

音楽が私たちにもたらしてくれる力に光を当てた号。選べる表紙には、エディスリマン(前Saint Laurant Paris クリエイティブディレクター)が撮ったマイケルジャクソンの娘パリスジャクソン、ライアンマッギンレーによるソランジュ、ペトラコリンズによるチャンスザラッパー と豪華な顔ぶれ。

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 まだまだビルボードには載ってこない新人女性アーティストの紹介は、音楽マニアをもわくわくさせるラインナップ。フロリダのナイトクラブで起きた銃撃事件の被害者が音楽が持つHealingの力について語った記事、カミラカベロ(元Fifth Harmony)と人気NetFlixドラマオレンジイズニューブラックのDiane Guerreronoという今人気のラテン系女性アーティストの二人がLatinx Starに光があたっている今日について語り合う記事(人種問題に関する話)は、デリケートな社会問題について音楽をきっかけに考えさせる特集だった。語りづらいトピックを興味を惹くものへ華麗に変化させてしまう編集企画力。

また、SNS時代にいじめ・鬱など問題を抱えがちなティーン達へ、"Generation AnXiety"と題して有識者からのアドバイスをクールにまとめている。ネットで誹謗中傷の被害をうけた歌手KESHAによるインタビューも興味深い。(ネットいじめ以外に、ティーンの頃変わり者だったという彼女の経験から、ありのままでいていいというメッセージも伝えられている)ファッションもビューティも音楽テーマ。TLCのファッションについてや、ロックスターなりきりメイクなどグッとくるものばかり!

 

Vol.3 The FUTURE is

「未来」について考える号。今後を担っていく女優・モデルとなっていくであろう3人を表紙に抜擢。人気NetflixドラマStranger ThingsでElevenを演じたミリー、女優であり活動家のアマンドラステンバーグ、今シーズン大注目のモデルのカイア・ガーバー。

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黒人銃撃事件で亡くなった少年Jordanへの手紙は、これからの未来を生きていくティーンへ、彼の生き様(自分を盾として兄弟を守った)を伝えるもの

www.teenvogue.com

アマンドラへのインタビューでは人種差別問題について。

wired.jp

ミリーは、インスタグラムエイジに生まれた子役として、瞬時に名声を得られてしまうこの時代について語る。 

※最終号となるVol.4にはヒラリークリントンの登場が予告されています。

 

ここまで3号の特集について紹介してきました。

もちろん、個々の記事がデジタルに移行したとしてもなんら問題はないと思います。しかし、VOICES,BEAUTY,FASHION,,,多面的に一つのテーマについて考えていくという行為は、一冊の雑誌にまとまっているからこそできること。記事単体より、その説得力が何倍にも強まると思います。

一つひとつが独立してしまっている今のデジタルメディアの形では、私たちが好きなものしか読まなくなってしまう。ある子はセレブのインタビューしか読まなくなってしまう。また別の子はファッショントレンドしか追わなくなってしまう。前述しているJordanへの手紙だけをteenVOGUEへ読みに来る子はなかなかいないでしょう。

強制的に読者へ情報や考えを発信する「紙というフォーマット(雑誌)」は、ティーンへの啓発・教育に適しているのではないかと思います。

しかし、若い世代向けの媒体は、どんどんデジタルに移行していくでしょう。今の速報型ではなく、デジタル上で多面的に一つのテーマについて掘り下げていく・考える体験をさせる方法を模索していけたらいいなと思います。

私は、ティーン誌が今の自分を形成していると言っても過言ではないと思っています。様々なカルチャー・ファッションへの好奇心をつくってくれ、海の向こうの世界を教えてくれ、ちょっとみんなと違うけどそのままでいいのだと気づかせてくれた。恩返しとしてティーンたちをわくわくさせる何かを作りたいなあと、こっそりと思っていたりするのでした。

 

過去に書いた雑誌についての記事はこちら・・・

yu-kixx.blog.houyhnhnm.jp

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