book review :ザ・スコットフィッツジェラルド・ブック

村上春樹 著訳

「ザ・スコットフィッツジェラルド・ブック」


ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック (村上春樹翻訳ライブラリー)


フィッツジェラルドの描く、

1920年代の華やかなジャズエイジの浪費的で刹那的なアメリカがとても好きで、(村上春樹のお坊っちゃん感溢れる小説と同じくらい好き)、

この本の中にある「リッチボーイ」という短編を目当てに買ってそれ以外放置していたけれど、読んでみたら素晴らしい本だった。


(基本的に華麗なるギャツビーと同じような、"盛者必衰"な展開と分かっているからあまりに読む気にならなかった。)


前半は、村上春樹フィッツジェラルド想い出の地を巡ったり、地図で調べてみて、物々言うエッセイ。

特にフィッツジェラルドに関心がなくても、風景描写に春樹節が炸裂していて美しいし、面白い。


後半は妻ゼルダの伝記など。

ゼルダはフラッパーという女性像の筆頭になった、なににも縛られずエネルギッシュで自由奔放、しかし、悪くいえば破天荒な娘だったことが、ここに書かれている具体的な彼女の奇行を通してわかる。

また、フィッツジェラルドが売れなくなっていき、彼女のエネルギーが徐々に枯れていって老け込んでいく様、自分で稼げず男の金に頼って暮らす女の悲しみは、まさにギャツビーのデイジーに重なる。この伝記も短いながら読み応えあり。



フィッツジェラルドと聞くと、

華麗なるギャツビーの人ね、

となるけれど、

後期はああいう感じのものばかりを求められて、屑のような短編や映画の脚本を書いて、借金にまみれながら死ぬという、なんとも悲惨な、ギャツビー的人生。

(彼はそんな自分のことを"文学娼婦"と表現していた)


スコットフィッツジェラルドと妻ゼルダの人生について、彼を敬愛する村上春樹が愛情を込めて切なく語る一冊。